iPadが思うように動かないとき、画面には「原因」が表示されません。
そんなときに役立つのが、Macの「コンソール」アプリです。
表に目立って表示されておらず、僕は最近この存在を知り強力なツールだという事に気付かされました。
iPadをUSBでMacに接続するだけで、通常見ることが出来ないiPad内部の動作ログを、コンソールアプリでリアルタイムに確認できます。
この記事では、よくある4つのトラブルを例に、コンソールを使った調査方法をご紹介します。
コンソールアプリとは?
Macに標準搭載されている「コンソール」アプリは、システムやアプリの動作をリアルタイムに記録している「ログ」を閲覧するためのツールです。
ふだん目には見えないエラーや警告、接続状況の細かい情報まで表示できるため、MacやiPhone、iPadのトラブル調査に欠かせない存在です。
画面はシンプルに見えますが、「タイプ列」でエラーの重大度を色分けしてくれるので、問題の切り分けポイントがひと目で分かります。また、検索機能やフィルタを使えば、膨大なログの中から特定のアプリ名やキーワードに絞り込むことも可能です。
普段使う機会は少ないかもしれませんが、iPadを接続して調査する場合は「どの機能でエラーが出ているのか」を探す強力な手がかりになります。
準備:必要なものとログ取得方法
- macOS搭載のMac(できれば最新版)
- Lightning/USB-Cケーブル
- iPad本体
- Apple Configurator(必要に応じて)
接続とログ取得操作
- iPadをMacにケーブル接続
- iPadの「このコンピュータを信頼」を許可
- Macで「コンソール」アプリを起動
- サイドバーの「デバイス」欄から接続したiPadを選択
- 「開始」を選択
- リアルタイムで流れるログを確認
共通の見方
A. 列表示と色の意味
- コンソールを開く → ヘッダー(列名)部分を右クリック → タイプ / サブシステム/ カテゴリー / プロセス/ 時刻 / メッセージを有効化。
- タイプ列の赤・黄色バッジに注目
レッド: 失敗
イエロー: エラー
ダークグレイ: デバッグログメッセージ
ライトグレイ: 情報ログメッセージ
→ 基本は 失敗と エラー から読みます。
B. 速攻フィルターの作り方
- 画像にある「エラーと失敗」ボタンを選択する。ログから赤と黄色タイプのみを表示することができます。
- 右上の検索窓の空白をクリックしカーソルを合わせて条件を追加 → サブシステム や プロセス を指定(後述のケース別参照)。
- もしくは調査対象に関連性が高そうなログを選択し、右クリックし該当のサブシステムやカテゴリーなどを表示・非表示を選択して絞り込む
コツ:色でアタリを付ける → サブシステム/プロセス で“場所”を特定 →メッセージの内容で“原因”を読む。
調査パターン例
- アプリのクラッシュ原因確認
- アプリ名で検索してクラッシュ時刻付近のログをチェック
- Wi-FiやVPNの接続エラー
- ネットワーク関連のキーワードでフィルタ(例:Wi-Fi, VPN, network)
- 周辺機器接続の不具合
- USB/BT関連のログで接続・切断タイミングを追跡
- MDMや構成プロファイルのエラー
- mdmdやProfileで検索するとインストール失敗原因が見つかることも
- システムイベントの確認
- バッテリー異常、ストレージ不足、再起動履歴など
不具合ケース例4つ:見るべきポイントと具体フィルター
1) Sidecarが繋がらない
再現:Sidecar接続を開始→失敗する瞬間までログを流す。
フィルター例
- タイプ:失敗/エラー
- サブしシステム: com.apple.sidecar / com.apple.continuity / com.apple.bluetooth / com.apple.wifi / com.apple.awdl
- メッセージ内容: peer, pair, auth, handoff, timeout, unavailable
赤が出やすい箇所/読み取り例
- AWDL / Bluetooth 関連の Fault:近接発見やピア間リンクが作れない
→ iPad/ Mac の Wi-Fi & Bluetoothを再ON、距離を近づける、干渉源(2.4GHz 電子レンジ/テザリング)回避 - auth / pair 失敗:Apple ID / 2FA / キーチェーン問題
→ 両方で 同一Apple ID、二要素、iCloud キーチェーンを確認 - network timeout:同一ネットワーク/サブネットでない、ファイアウォール遮断
→ 同一VLAN、受信者の受信設定や企業ネットワークのmDNS制限を確認
2) iPadの通信が遅い
再現:遅い操作(Web読み込み等)を行いながらログを観察。
フィルター例
- タイプ: 失敗/エラー
- サブシステム: com.apple.wifi / com.apple.network / com.apple.mDNSResponder(Bonjour/DNS)
- プロセス(補助): mDNSResponder
- メッセージ内容: RSSI, roam, retry, drop, resolve, timeout, no route, congestion
赤の読み取り&解釈例
- DNS resolve 失敗 / timeout:名前解決遅延
→ ルーターのDNS設定、DNSサーバ切替(例:1.1.1.1/8.8.8.8)、VPNのDNS分割設定を見直し - RSSI/roam頻発:電波弱い/混雑で再接続多発
→ -67dBm 付近までが実用目安。APの位置変更、5GHz優先、チャンネル干渉の回避 - drop / congestion:AP過負荷 or 帯域不足
→ 接続台数分散、旧規格混在の整理(11b/c混在対策)、QoS/帯域制御確認
3) AirPlayができない
再現:AirPlay先の選択〜接続開始まで行う。
フィルター例
- タイプ: 失敗/エラー
- サブシステム: com.apple.airplay / com.apple.mDNSResponder(検出) / com.apple.network
- メッセージ内容: discover, found/not found, auth, pair, PIN, HDCP, timeout
赤の読み取り&解釈例
- discover / not found:機器検出できていない
→ 同一ネットワーク、VLAN越えmDNS許可、AirPlay受信側のAirPlay受信ON - auth / PIN 失敗:認証エラー
→ 表示されたPINの入力ミス、時刻ズレ(自動日時) - HDCP/保護系エラー:著作権保護リンク確立失敗
→ 受信側のOS/ファーム更新、HDMIアダプタ・ケーブル交換
4) AirDropができない
再現:共有→AirDrop→相手が見えない/送れない状態を作る。
フィルター例
- タイプ: 失敗/エラー
- サブシステム: com.apple.sharing / com.apple.awdl / com.apple.bluetooth / com.apple.wifi
- プロセス(補助): sharingd, bluetoothd
- メッセージ内容: discover, visibility, permission, policy, transfer, failed, timeout
赤の読み取り&解釈例
- discover/visibility:相手が見つからない
→ 受信側の受信設定(“連絡先のみ/10分間のみ”)、連絡先カードのメール/番号一致、AWDL稼働(Wi-Fi/Bluetooth ON) - permission/policy:管理プロファイルやスクリーンタイムで制限
→ MDM/構成プロファイルやコンテンツとプライバシー制限を確認 - transfer failed/timeout:転送開始〜中断
→ ファイルサイズ・距離・干渉、別経路(Wi-Fi→同一AP近くへ、有線共有)を試す
注意点
- ログには個人情報やデバイス固有情報が含まれる場合あり
- 全てのエラーが不具合の原因ではない(正常動作でもエラー表示される場合あり)
- 解析に時間がかかります
Macで取得出来るログ・ファイルの種類
補足としてMac自体になるとさらにいろいろなログを表示する事が出来ます。
- システムログ(System.log)
MacのOS全体で起きたシステム関連のイベントを記録しています。起動やシャットダウン、ハードウェアの状態、カーネルのメッセージなどが含まれます。 - アプリケーションログ
各アプリケーションが出力するログを指します。エラー情報、操作履歴、警告などが含まれ、問題解決に役立ちます。 - クラッシュレポート(Crash Reports)
アプリケーションやシステムがクラッシュした際の詳細なレポートファイルで、どの部分で失敗したかの解析に使われます。 - 診断ログ(Diagnostic logs)
システム診断のためのログで、パフォーマンスや異常の兆候を詳細に記録しています。 - インストールログ
ソフトやアップデートのインストール過程で発生したイベントがログされています。 - 「error.log」は、システムやアプリケーションで発生したエラー情報を記録したログファイル
これらのログはファイル名やカテゴリで分類されており、拡張子や名前で判断されます。例えば「.log」は基本的なテキスト形式のログファイル、「.crash」はクラッシュレポート、「.diag」や「.plist」は診断や設定情報などです。
Macのコンソールアプリはこれらを集約して表示し、ユーザーが目的別にログ内容を参照しやすくしています。実際のファイルの拡張子や名前はmacOSのシステム内部で定められており、Finderやターミナルで確認可能です。
まとめると、コンソールに表示されるログファイルは「システム」「アプリ」「クラッシュ」など目的に応じて分類されており、そのファイル別の意味は何のログかを示しています。
まとめ
Macのコンソールアプリは、まるでiPadのトラブル原因を探るための“顕微鏡”のような存在です。
ログの中から正しいキーワードで検索し、さらに時間指定を組み合わせることで、原因の特定にぐっと近づけます。
サポートに依頼する前に一度ログを確認しておけば、やり取りもスムーズになり、問題解決までの時間を短縮できると思います。
僕は実際にコンソールアプリを開き、iPadを接続してログをのぞいてみると今まで見えなかったログを取得出来ることに驚きがありました。
日常では気づけない細かな動作が見えてきて、トラブル解決の新しい手がかりになる強力なツールです。